ぐちをブログ

2019/11/02(土)

【書評】「読みたいことを、書けばいい。」

 

2週間ほど前に良著と出会いました。

「読みたいことを、書けばいい。」

書店に行くと、平積みにされているこの本。タイトルだけで著者の伝えたいことがわかってしまうので、読むまでもない…と思っていました。(実際、著者の田中泰延さんも、本当に言いたいことはごくシンプルで、いろいろと膨らませて書いた。的なことを言っていたと思います)

でも、僕の知人が読んで「良かったよ!」とおすすめしてくれたので、ようやく読むことに。想像以上に良い本だったので、備忘録をかねてあなたに共有します。

 

世にあふれる表面的な文章術たち…

今、世の中には、文章術に関する本が所狭しと並んでいます。

「人を操る文章術」
「人を動かす文章術」
「売るための文章術」…etc

こうした本がたくさん売れているのには理由があります。

それは、私たち人間は「できるだけラクをして成果を得たい」という考えを持っているからです。ちょっとしたテクニックで、最大限の成果を得ようというわけです。

でも、ちょっと待ってください。それらの文章は、本当に私たちの心を捉えることはできるのでしょうか?例えば、恋愛に置き換えるとわかりやすいです。

「単純接触効果」というものを知っているかと思います。会う数が増えるほど、相手がこちらに好意をもってくれるというものですね。では、こうした心理学のテクニックを活用することにしたとしましょう。気になる相手に好かれるために、接触回数を増やしたとして…それだけで、相手が自分のことを好きになってくれると思いますか?

そんなに簡単だったら、誰も恋愛に困りませんよね。(笑)これはいくらテクニックを重ねようと同じことです。私たちは、バカではありません。表面的なテクニックに惑わされず、本質を見抜く力が本能的に備わっています。

どれだけ笑顔でも、目の奥が笑っていなかったり。
どれだけ優しくても、裏で騙そうとしていると感じたり。
どれだけ美辞麗句を並べていても、信用ならないと感じたり。

かすかな違和感を感じ取り、相手の本心を見抜く力が備わっています。だから、「テクニック」だけに頼った文章も、そのようにハリボテを見抜かれる可能性が高いのです。

じゃあ、いったいどうしたらよいのか?それに対し明確な回答を導き出したのが、「読みたいことを、書けばいい。」という書籍なのです。

 

結論=「読みたいことを書けばいい。しかし…」

あなたも察していると思いますが、結論、読みたいことを書けばいいのです。「自分がおもしろくもない文章を、他人が読んでおもしろいわけがない。だから、自分が読みたいものを書く」と田中さんはおっしゃっています。

世の文章術に関する本では「ターゲットとなる読者のペルソナ(人物モデル)を…」と教えられますが、そういったことも一切不要です。僕もこの考えには同意します。

というのも、自分の頭の中でつくり上げたペルソナに語りかけたところで、そのペルソナがどう反応するかなんて、全く想像がつかないからです。それよりも、自分の心が動く、そんな文章を書いたほうが、圧倒的に他の人から反響を得ることができます。

いったいなぜか?

それは、私たちの心の動きには共通する部分があるからです。自然豊かな田舎で育とうとも、ビルの喧騒にまみれた都会で育とうとも、英語圏で育とうとも、アフリカで育とうとも…。どんなことに「楽しい」「悲しい」「嬉しい」「怒り」などの感情が湧くのかは、ある程度共通する部分があります。

例えば、最愛の人が亡くなってしまったときに「楽しい!」と思う人はいないはずです。だから、白人主演の映画だとしても、肌の色に関係なく、みなが涙を流すわけです。つまり、あなた自身、心動かされるものがあれば、それは他の人の心を動かす可能性が高いというわけです。そのため、下手にペルソナを考えるよりも、自分の心に従って、読みたいことを書けばいいということですね。

しかし、ここにも注意点があるのだと、田中さんはおっしゃいます。

 

「自分の内面のみを語る」のは、読み手にとってつまらない

それは、「自分の内面」ばかりを語ってはいけないということです。人は基本的に、他人の内面そのものにはあまり興味がありません。なぜ、そのような心の動きになったのか?そのプロセス全体に興味があるのです。

例えば、ある映画を見た時に「面白かった!」と言われるだけはつまらないでしょう。でも、「あんまり期待してなかったんだけど、ストーリーに予想外の仕掛けがあってどんどん引き込まれちゃったんだ。ミステリー系の映画は10本くらい見てきたけど、ダントツで良かった!ミステリー好きな人にはたまらないと思うな。めっちゃ面白かったよ」というふうに、なぜ「面白い」と思ったか、そのプロセスを共有することで、聞いている側も興味が湧いてくるのです。

少し抽象度が高いですが、田中さんは「心象を語るためには事象の強度が不可欠なのだ」とおっしゃっています。
内面を語るだけではなく、それに至った背景も合わせて伝えようということですね。

 

「言葉」とは、文字通り「葉」である

ぼくがこの本を読んで最も感銘を受けた言葉。
それは、「『言葉』とは、文字通り「葉」である」ということ。

「葉」が存在するためには、枝があり、幹があり、その先に「根」の存在が不可欠です。
先ほど述べた「内面」が「葉」だとするなら、その「根」は「事象」。
なにかしら伝えたいこと=葉があるなら、その理由や根拠=根が必要ということ。
この考え方は人生にも通ずるな、と感じました。

日々、生活をする中の、全ての人との出逢い、仕事やプライベートでの体験、本などから得る知識…すべてがあなたの「根」となり、言葉という「葉」をかたち作る。

とても素敵な考え方ですね。

あなたは、どんな「葉」をつけたいですか?
そのために、どんな「根」を育てていますか?

人になにかを伝えていきい方は、ぜひこの言葉を頭の片隅においてみてください。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。